所属するメンバーのこれまでの研究実績やプロジェクト経験を踏まえた「得意とする研究開発分野」は以下の通りです。それぞれの領域で、学術的な知見と社会実装を結びつけるためのノウハウを蓄積しており、実証的なアプローチが強みです。
1. 生成AI・LLMインテグレーション
大規模言語モデル(LLM)を業務システムに統合するための技術基盤の構築に取り組んでいます。Model Context Protocol(MCP)に準拠したサーバーを複数開発し、LLMが検索エンジン・データベース・外部APIにアクセスするためのインターフェースを整備しています。LangGraphによるReActパターンのAIエージェント構築、Gemini APIを活用した日本語文書のOCR・構造化処理(PDF→Markdown変換)、さらにRAG(Retrieval-Augmented Generation)パイプラインの設計・実装まで、生成AIを活用した情報アクセスの高度化を一気通貫で手がけることができます。
2. 日本語自然言語処理・文書インテリジェンス
spaCy/GiNZAやSudachiを用いた日本語形態素解析・固有表現抽出の実装経験が豊富です。技術文書から日付、地名、組織名、工法名などのメタデータを自動抽出するパイプラインを構築し、非構造化文書のデータベース化を実現しています。PDF・Word等の多様なフォーマットからの情報抽出、JSONL形式での検索エンジンへの一括投入まで、文書のライフサイクル全体をカバーする処理基盤の構築が可能です。
3. 情報検索・ハイブリッド検索技術
Elasticsearchを用いた大規模文書検索基盤の設計・構築に豊富な実績があります。BM25によるテキスト検索とベクトル類似度検索を組み合わせたハイブリッド検索(RRF: Reciprocal Rank Fusion)により、キーワードの一致と意味的な関連性の双方を活かした高精度な検索を実現しています。また、DuckDBを活用した軽量かつ高速な分析用データベースの構築にも取り組んでおり、全文検索(FTS)や空間インデックス(R-Tree)を組み合わせ、数十万件規模の構造物データに対してミリ秒単位の応答を達成しています。用途に応じてElasticsearchとDuckDBを使い分ける、あるいは併用するアーキテクチャの設計が可能です。
4. クラウドネイティブなデータ活用基盤
サーバーレスアーキテクチャを活用した、運用負荷の低いデータ活用基盤の設計・構築を得意としています。Cloudflare Workers/D1/R2やAWS S3/App Runnerなど、用途に応じたクラウドサービスを組み合わせ、スケーラブルかつコスト効率の高いシステムを実現します。Parquet形式によるカラムナストレージとHiveパーティショニングによるデータレイク構成、イベントソーシングによる履歴管理・分散同期、DuckDB-WASMを活用したブラウザ上でのオフラインファースト分析基盤など、モダンなデータ基盤アーキテクチャの知見を有しています。
5. ビッグデータ解析・データマイニング
大規模データを収集・統合し、探索的な可視化分析や知識フェデレーション技術を用いて有用な知見を引き出す研究開発実績があります。自治体や企業で扱う膨大な業務データ、センサーデータや多種多様なオープンデータを組み合わせ、意思決定支援のための統合基盤やインサイト発見の仕組みを設計・開発することが可能です。
6. 地理空間情報処理・可視化
住所ジオコーディング、線形参照システム(LRS)、空間インデックスを活用した高速な地理空間クエリの設計・実装実績があります。数十万件規模の構造物データに対する最近傍検索をミリ秒単位で実行可能な基盤を構築し、Cesium.jsによる3D地理空間可視化やFoliumによるインタラクティブ地図の構築も行っています。衛星データ(SAR/InSAR)を用いた地表変動の時系列解析にも取り組んでおり、地盤沈下や斜面崩壊のモニタリングへの応用が可能です。
7. サイバーフィジカルシステム(CPS)とスマートシティ
物理空間とサイバー空間を高度に連携させるCPS技術を駆使した、社会システム・サービスの最適化に携わってきました。札幌市の除排雪効率化や交通混雑把握、防災・減災のためのリアルタイム情報の共有など、実際の都市・地域課題を解決するためのプロジェクト経験があります。
8. インフラモニタリング・ヘルスモニタリング
橋梁や道路などの老朽化が社会課題となるなか、多種多様なセンサーデータを統合・解析する基盤構築に携わってきました。インフラの劣化予兆を捉えるヘルスモニタリング技術や、経年劣化を膨大なデータを用いて可視化する手法に強みがあり、官民連携による社会インフラの長寿命化のために貢献します。
9. 防災・減災技術
河川氾濫対策や浸水センサー、道路交通障害への対処など、防災・減災領域での研究開発に取り組んできました。低コストセンサーの開発からデータ解析・通知システムの実装まで、広範なフェーズで関わり、現地や行政機関との協働経験を通じて、運用面での課題解決にも貢献してきました。
10. 画像認識・画像検索技術
機械学習や深層学習を活用した画像解析が得意です。特に古文書の画像翻刻支援や文書画像全文検索技術など、既存の画像認識手法を古文書や特殊文書に応用する研究を手がけてきました。難解な文字形状を検索する独自アルゴリズムの開発などに強みがあります。
11. モバイルセンシング・クラウドソーシング
スマートフォンなどのモバイル端末を使って人々の移動データや環境データを収集し、それをクラウドソーシング型で解析・活用する研究開発の実績があります。道路交通や公共サービスの最適化、防災・減災につなげる実装事例を複数遂行し、現場と連携しながらシステムを開発するノウハウを有しています。
単なる技術要素の研究にとどまらず、実際の社会課題・産業課題へ適用するプロセス全般を見据えたシステム開発・運用ノウハウが強みです。学術的根拠や研究成果をベースにしつつ、実際の現場やビジネスに落とし込むことで、確かな価値を提供できる点が特徴といえます。
メンバーが関わった主な研究開発プロジェクト
科研若手B(代表):文書画像全文検索技術を基盤とする古文書画像翻刻支援システムの研究(2012-2014)
機械学習による画像認識・画像検索技術の古文書画像に対する応用
科研基盤A(分担):データ集約型科学研究における探索的過程を支援する即興的知識フェデレーション技術(2012-2015)
ビッグデータ分析、探索的な可視化分析技術に関する研究
文科省 未来ICT(分担):社会システム・サービス最適化のためのサイバーフィジカルIT統合基盤の研究(2012-2016)
データを活用した札幌市除排雪効率化に関する研究(CPS、モバイルセンシング、ビッグデータ解析)
NICT(拠点代表):モバイルセンシングを活用したスマートシティアプリケーションの研究開発(2014-2018)
モバイルセンシング・クラウドソーシングによる道路交通状況の把握と活用
総務省・札幌市(分担):データ利活用型スマートシティ「札幌市データ活用プラットフォーム構築事業」(2018)
冬季プローブカーデータの収集による交通状況把握とスマート除排雪サービスの検証
内閣府 SIP(分担):インフラセンシングデータの統合的データマネジメント基盤の研究開発(2014-2019)
橋梁ヘルスモニタリング、データ統合、多種多様なセンシングデータを処理・蓄積・解析する技術の研究開発